労務管理Q&A - 有給休暇
有給休暇に関する労務管理Q&A
A社の場合・・・
- 期間2ヶ月の契約を2回更新し、最初の契約時から通算すると6ヶ月を経過した嘱託社員がおります。この者に対しても、100日の年次有給休暇を付与しなければならないのでしょうか。又、定年後の再雇用者については、勤務の継続期間は再雇用後から計算するのでしょうか、それとも定年退職前の勤務期間も通算しなければならないのでしょうか?
- 年休の発生要件としての勤務の「継続性」は実質的に判断され、有期契約が、更新された場合や、定年後再雇用の場合にも、就労の事実が途中中断することなく継続しているときは、勤務期間は通算される可能性があります。
■継続勤務要件について
(1)職種変更等による継続勤務の要件
継続勤務とは当該企業での在籍期間のことです。業務災害における休職は勿論のこと、私傷病による休職や労働組合の専従職員、 他社に出向している期間も含めて全ての期間が在籍期間となります。例えば定年退職をし、当該退職に伴う退職金の精算をして再雇用をした場合にも定年退職前とその後の再雇用の期間を通算して年次有給休暇を付与しなければなりません。また、アルバイトや契約社員から正社員になった場合にも同様であり、いずれの場合にも当該企業との雇用関係において労務管理上の区分が変更されたに過ぎず、在籍期間に影響を与えるものではないと考えるからです。
例:期間の定める労働者が契約を更新した場合
更新している以上、在籍期間の蓄積はなされており2ヶ月契約を3回繰り返せば年次有給休暇の発生要件を満たすこととなります。
年次有給休暇の発生
この場合において、契約更新の際、前の契約とその後の契約の間に一定期間を設けて継続勤務性を否定する主張がなされる場合がありますが、実態として一定期間を設けることが継続勤務性の否定を意図しておこなわれている場合には、前勤務との継続性が認定される可能性が高く、業務の関係上一定期間あいた場合にも同様の取扱がなされると考えられます(昭36.11.27 基収第140号)。
(2)企業合併及び企業分割の場合
企業の吸収合併や営業譲渡、会社分割等いずれの場合においても、商法上の考え方と違い労働法上の考え方においては、労働契約自体が譲渡されたものとみなされ、継続勤務性は中断されず、新組織においても従前の勤務期間を通算した期間が在籍期間となり、その期間に基づき年次有給休暇が付与されます。
(3)転籍
転籍の場合には、継続勤務は中断されます。在籍出向の場合や上記営業譲渡、合併等の場合と違い転籍については継続勤務性が認められず、新たな雇用関係が成立したと考えられ、転籍した日が入社日と考えられ、当該日から6ヶ月継続勤務した日に年次有給休暇の付与がなされるいうわけです
パートから正社員への雇用においての労務管理Q&A
B社の場合・・・
- 当社では、1日6時間、週4日就業する5年間勤務したパートタイマーを、正社員として登用することにしました。年休を考える際に、パートタイマーとしての勤務期間を入れる必要があるのでしょうか? また、年度途中に登用する場合は、その時点で正社員の日数を追加付与しなければならないのでしょうか?さらに、当社で就労している派遣労働者を登用する場合や、紹介予定派遣で来ていた労働者を採用する場合はどう考えるのでしょうか?
- パートタイマーから正社員に登用された場合は、年休の発生要件との関係では、その時点までの勤続期間が通算されます。紹介予定派遣の場合も含めて、派遣労働者であった期間については、勤続期間としては通算する必要はありません。
■パートが正社員に変わる等、勤務条件に変化があった場合の有給日数
この日数は、有給休暇が発生する基準日の労働条件で決定します。
年休は所定の勤務の継続と出勤率を具備することにより当然に発生する権利であり、その付与日数は、あくまでその発生時の状況によって決まるということになりますので、年度の途中において所定労働日数に変更があった場合であっても、当該年度における付与日数に変更はなく、次の基準日に、変更後の労働日数条件に基づいて、有給が付与されるだけです。
週所定 労働日数 |
1年間の 所定労働日数 |
継続勤務年数 | ||||||
6ヵ月 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 | ||
4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
【所定労働日数が少ない労働者に対する年次有給休暇の比例付与日数】
変則的な勤務時間帯においての労務管理Q&A
C社の場合・・・
- 当社には、夜12時をまたぐ勤務時間帯のある3交替制(1勤務実働8時間)の職場があり、年休についての労働日は暦日計算を原則としながらも、8時間3交替はその例外として、この時間帯を含む24時間で考えても良いとされていると聞きましたが本当でしょうか?また、晩方の変更時には2直連続勤務となる場合がありますが、この場合の年休日数はどのように考えればよいのでしょうか?さらに、午後10時までの勤務であったものが、残業により翌日の午前1時まで勤務したときは、その日の当初の勤務を免除すれば、年休を付与したことになるのでしょうか?
- 交替制勤務における2暦日にまたがる勤務については、その勤務時間を含む任意の継続24時間を1労働日と扱うことができます。
■年休日の前日の勤務が年休日まで延長されたとき
1日の年休を消化したものとは扱うことができません。
この場合、会社はすでに年休日は就労義務を免除しており、社員が出社したからと言って、緊急勤務時間以後の就労またはその日の就労の復活を期待していないのが通常です。
よって、緊急勤務以後の就労は免除した上で、暦日の休みが与えられていない以上有給は消化と取り扱うことはできません。そして、この日の分を無給とすることは社員にとってあまりにも不利な条件のため、有給の消化とは取り扱いませんが、
賃金は有給扱いにして支払うと言うのが適切な対応